村田沙耶香の小説について
今日も喫茶店へ。国試まで3日。村田沙耶香の「生命式」という短篇集を読んだ。人肉を食らうこと、人体をリサイクルして製品化すること、一睡もしない生活、公共の場で男と女が交わること。今では常識的なことが非常識となった世界、その逆に非常識的なことが常識となった世界。どこまでが正常で、どこからが異常なのか。なにが個人を排除し、擁護するのか。そう自問せずには読み進められない。
パンデミックの最中、感染予防としてあらゆる飲食店に無数に並んでいた透明な仕切り板。それと同じようなパーテーションを、実は人間はパンデミック以前から、個人の都合で並べては除けて、並べては除けて、それを繰り返して生存してきた。その仕切りは肉眼では見えないが、確かに存在する。人々の安心材料でもあったその境界線を、この小説は躊躇いもなく溶かし尽くしてしまう。おそろしく、おもしろい。